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第782节(第39051-39100行) (782/860)
今のは幻《まぼろし》じゃなくて、たしかに嘘みたいな話だけど現実で、任せうとか言わ
れてホッとしてて、でもここに残っていうって、特急乗り過ごしちゃうけど別にいいかなっ
て頷いて、そういえばわたし、俯いてばかりでヘンな人の顔をよく見てなくて、あ、だから
さっきから〃ヘンな人〃としか呼べないんだ、と自分につっこんでみたりして――突如《と
つじょ》。遠くの方……川にかけられた橋のあたりから、花火があがるような音がして、我に
返った。
「へ、うええ――!?」
爆発!爆発だ!周りのみんなも足を止めて橋の方を見ている。ここまで響いてくるってコ
トは、よほど大きな爆発だったんだろうか?煙らしきものは見えない。事故があったのは間
違いないけど、町中《まちなか》で爆発――わたしが視たのは、そんな大きなものじゃなか
った。ただの人身事故で、こんな、遠くからパトカーのサイレンが聞こえるような、大事件
じゃなかった。
でも、もし……あのヘンな人がわたしの言葉を信じておじさんを追いかけて、その結果お
じさんは工事中の道で、通り過ぎるダンプカーの荷台にバッグを奇跡的偶然でひっかけて、
電柱でパンみたいにロールされて、止めに入ったヘンな人がなんか頑張りすぎちゃって、ダ
ンプカーが橋まで暴走した、なんて――
膝が震える。ぐらっと地面ごと奈落に落ちそうな吐き気。
そんなわたしの前に、やっ、と手を挙げて帰ってきたヘンな――ヘン、な――
「お待たせ。君の言う通りだったよ。いや、ホントに危なかった」
黒いメガネのその人は、ぜんぜん危なそうじゃない声でそう言った。
わたしはようやく、顔をあげてまともに彼と向き合った。
――死にたい。というか五分前のわたしを殺したい。わたし、なんでこの人を「ヘンな人」
なんて言っちゃったんだろう……!
「あの人、大怪我せずに済んだよ。怪我はしたけど、ちょっと転んだ程度だった」
その左腕には大きな擦《す》り痕、あのおじさんがダンプカーに巻き込まれそうになった
時、強引にバッグを取ろうとして洋服を擦ったのだろう。
そんなとばっちりの怪我も、メガネの人はぜんぜん気にしていない。
はじめてのコトだらけで、わたしはまたも頭が真っ白になる。
あんな言葉で信じてもらえた。
あんな風景を起こさずにすんだ。
それと、はじめて――
「うん、本当に良かった。あの人も、今頃は君にお礼を言ってるんじゃないかな」
――偉いぞ、と。
わたしの馬鹿げた自己満足を、この入は、誇らしげに認めてくれた。
「――、っ――」
気付いた時にはもう遅かった。
さっきまでの我慢と、もしかしたら今までずっと耐えてきたものが堰《せき》を切って、
ぽろぽろと瞳《ひとみ》からこぼれだす。
「へ?ちょ、どうしたの……!?」
慌ててわたしの顔を覗きこむメガネの人。公衆の面前で、年下の子に泣かれたらそりゃあ
慌てない方がおかしい。
わたしはわたしで、そんな彼に悪いと思いながらも涙を止めなかった。嬉しくてこぼす涙
なんて滅多《めった》にないし、正直、慌てるお兄さんの仕草があまりにもツボだったので
す。
以上がコトの始まりにしてほとんどおしまい。
わたしこと瀬尾静音と、黒桐幹也さんとの運命の出会いなのだった。ばきゅーん。
/未来福音(偽)
かつて、私の世界は二つあった。
錯覚でも比喩でもない。机に二つのモニターを載せたように、まったく同じ風景を、違う
世界として同時に見ていた。